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2009年2月5日木曜日

それは人のためになるのかい?

昨日の日記で育ての親の話を書いた。「岩井秀隆」という人の話。本名は違うけど、きっと本人もペンネームでの紹介を望むだろう。何やら有名な作家のゴーストライターだったらしい。

「誰のゴーストライターやってんすか?」と聞いてみたが、
「ゴーストライターは主の名前を死んでも言えないのだ。うひひ。」
と、本当に死ぬまで教えてくれなかった。まぁ、死んでも言えないのは分かるけど、本当に死ななくてもな・・・。

最後まで聞けなかったけど、ペンネームからするとあの作家かな?
「岩井秀隆」→「○井○隆」?・・・憶測だし、ま、いいけどね。真実は永遠に闇の中というやつだ。一人の人間の死にそれくらいの謎があってもいい。
声はダンディで、文章はカチカチからフニャフニャまで変幻自在。文字を主体としたエンターティーメントに生きた人だった。

そんな岩井さんに、将来やってみたい仕事のことを話したことがある。

「もっとコンピュータ(当時「IT」という言葉はまだなかったと思う)をうまく活用して、中小企業に共通する業務効率化に貢献して、もっと知的生産性を向上させるビジネスをやってみたいんですよ。」

今でもコンピュータを含めた情報システムの構築によって、いかに人間の単調作業を減らし、その分だけ知的想像力を活用できるか・・・という分野は、個人的に興味の尽きないところだ。

岩井さんは言った。

「それは人のためになるのかい?」

そりゃなるだろう。やりたくない単調な仕事よりも、アイデアをひねって新しいことを考えるのは楽しい。楽しい時間を創出することに何の問題があるだろうか?

「単調な仕事でしか生きられない人もいるんだよ。そういう人たちから仕事を奪うことが、本当に人の役にたっていると言えるのかい?」

その時はなんと反論したかな。たしか、「知的作業に関して向上心のない人は、時代においていかれてもやむを得ないだろう」・・・的なことを言ったような気がする。

間違っていたね。前の日記にも書いたように、いろんな価値観の人がいてこの世界は成り立っている。「単調な作業」=「つまらない作業」と思っているのも、単に私の価値観に過ぎなかった。

私から見ると「単調な作業」と感じる仕事を、自分の生きがいだと思って、ただただ、がんばって生きている人たちがこの世界にはいる。私の価値観では分からない領域で、品質に差をつけてがんばっている人たちがいる。

そしてそういう人たちによって世界の物質面が構築されていたりもする。建築物とか製造物とかもそういう力で生まれている。そもそも、紙上や机上の空論だけで何ができるって言うんだ。

あれから10年・・・。製造分野で働く労働者がゴミのように切り捨てられる時代になってしまった。ある意味では、私が予想していた世界に近づいてしまった。そして、それはけっして幸せな社会じゃなかった。
適者生存・・・10年後の未来は私が描いたイメージとは違う世界だった。そして、今、まさに自分自身も「適者」であるかが問われている時代だ。

「それは人のためになるのかい?」

そんなわけで、今は逆に「ITで仕事を奪う」のではなく、「ITによって仕事を創出する」をやってみたいと考えています。そういう恩恵をいろんな人に分配できないだろうかとか。

きっとこの世界の中には、まだ見つけられていない「幸せの素」みたいなものが隠れているんじゃないのかな。「仕事の実」というか「仕事の種」というかそういう種類のお宝が。
そういうのを発掘して、いろんな人たちと共有できればいいんじゃないかなと思ってます。

岩井さんには、何も恩返しできないままに逝かれてしまったけど、その分を社会に恩返しできないかなと思っています。

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ちなみにGoogleで「岩井秀隆」を検索すると、ちょっと古いけど検索結果が出るわ出るわ。当時の相談室での悪名が轟いているようです(苦笑)。

当時も相当インターネット上で喧嘩をしまくっていたな。というか「集中砲火を浴びていた」ともいうけど。しまいには2ちゃんねるでも叩かれる始末で、そこまでくると逆にすごいような気もしなくもない。

「怖くないんですか?正直?」

私自身は相談室にほぼ関わらなかったが、こう聞いたことがある。

「匿名で書いてくる卑怯者なんか、全然ノープロブレム!」

それを聞いた時に、いわゆる一般的な「社会的弱者」という決め付けと、本質的な「精神的強者」という事実との乖離を実感したものです。

それにしても今はすごい時代だ。もう亡くなってしまった人の遠き日の活躍が、いまだにインターネットの片隅に残っていて、その当時の息の荒さまでもが伝わってくるのだから。

岩井さんの墓場はインターネットだな。たぶん。
もっと言うと、インターネットでまだ生きてるような気すらする。

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