+1

2011年1月23日日曜日

漢方薬のように

私と一緒に過ごしてきた方々の成長がすごい。気がつくと私が関知していること以上のことができるようになっている。私の願い通りに進化しているようで嬉しい。

なぜなら私の本質的な願いは「私がいなくてもスキルアップしていけること」だからだ。そのため私の講義では一貫して「自己解決力」の向上にこだわっている。

そういう環境下において、突出した才能を発揮する人を見いだしているのだが、よくこんな質問を受ける。「ここまでずいぶん苦労されたんでしょう?」と。

私としては「いえ、それが全然苦労していないんですよ」と答えるしかない。実際に苦労していないのだから。どちらかというと受講生の方々の努力の賜物だ。

私のやることは、わき上がってきた疑問を整理したり、それを自分で解決するためのものの考え方を伝えること。それから、できるようになった事実を認めて、高いモチベーションを持続してもらうこと。これだけだ。

私の力だけで受講生を引っ張り上げる・・・ということなら、とてつもない苦労を強いられるだろうと思う。しかし、実際のところは受講生が持っているエネルギーによって「自発的に」動いていただいているだけなのだ。

西洋の医薬品が化学作用で状況を好転させるのに対し、漢方薬は人体がもともと持っている抵抗力を増進させることで状況を好転させる。そういう意味で、私は「漢方薬」でありたいと思っている。

正直なところ、私のもとでめざましい進化を遂げた方々は、もともと「そうなるべき人だった」だけなんだと思う。ただ、「障碍」とか「あきらめ」とか「環境」によって見えなかっただけなのかもしれない。

いずれにせよ、私は漢方薬として、これからも「埋もれた輝き」を発掘する仕事を楽しんでいくつもりだ。

2011年1月4日火曜日

2011年、無理を砕く!

私が考えている「障碍を持つITスキルなき層」に「ITスキルを実装する」という夢は「時間がかかるし無理だろう」と言われたことだ。無理だ無理だと言われるほど私は燃える。誰もが無理だと思うことは、誰もができると思えることよりも価値がある。誰もができるのなら上手にできる誰かがやればいいのだから。そういう仕事ができるようになった去年は充実した年だった。

私は今、代々木のジョイコンサルティング株式会社において、障碍者の就労移行支援センター「ジョイワークセンター」の運営に携わっている。私も含んだ多くの夢の結晶として去年の10月から稼働しているセンターで、日に日に利用希望者が増えている。私はこのセンターを通して「夢を持った働き方」を経験して欲しいし、そこから巣立つ人材には社会の夢を作ってもらいたい。

「そんなこと無理だ、障碍のない人でも難しいのにデタラメもほどほどにしろ!」とお叱りを受けそうだが、この点において私はド真剣だ。「障碍者なんだから就職できるだけでもラッキーだと思わないと」などと妥協したくない。夢を持って仕事をする権利は誰にだってある。障碍を持っていたら夢を持って働いてはいけないとは誰が決めたのか?

これは私の個人的な思い入れだが、「ジョイワークセンター」という名称は、単に「ジョイコンサルティング株式会社」から「ジョイ」の文字をもらっただけではない。「Joy=喜び」「Work=働く」「Center=中心」。まさに「喜びを働きの中心に」という願いがこもっている。決してワーカホリックを推奨するわけではないが、やはり仕事は楽しい方がいい。

就労移行支援というのは表面的には「就職がゴール地点」だ。しかし、所詮は「表面的なゴール」に過ぎない。実際のところ「就職はスタート地点」にすぎないし、さらに言えば「人生の経過点」にしか過ぎない。地点の位置はともかくとして、長く働いていくためには「楽しい」または「心地よい」と思えることが非常に重要だと思う。

私は「仕事を趣味にするくらい」に仕事を好きになれるという体験をしてほしいと思っている。もちろん強制ではない。しかし、それくらいに仕事が面白くなったら「サザエさん症候群」なんてものは世の中から消える。土日を過ごしていると平日が待ち遠しくなる。そんな人生の一時期があってもいいんじゃないだろうか。

仕事が好きになるというのは、ある意味で才能だ。どんな仕事についてもやはり「イヤなこと」もあったりする。しかしそれを上回る「喜び」を感じることができるのなら、その仕事は続けていける。そういうマインドで仕事ができるのならば、もはや就労を継続させるための支援に頼らなくてもよくなる。私はそういうマインドをこそ獲得して欲しいと思う。

もちろん仕事だから厳しい状況もストレスも体験するはずだ。なぜなら当然ながら納期もあるし、品質によってはイヤになるほどのやり直しもある。それでも好きな仕事というのが天職なんだと思う。そしてその天職を見つけたり、逆に天職を自ら作り出すのもひとつの才能と言ってもいい。

これからジョイワークセンターを巣立とうとしている方々が、最終的にどのような道を選ぶかは分からない。しかし、人生の中で「きつかったけど、楽しいと思える仕事を体験した」と思えること自体が大きな財産だと思う。本気で自分で考えて、本気で仕事を楽しんだという「自信」や「実績」はウソをつかない。場所は違えども「仕事を楽しむスキル」は活きると信じている。

ちなみに、ジョイワークセンターはいろんな連携を積極的にしていく。一般企業とも、福祉施設とも、そして同業者とも。私はジョイワークセンターの可能性に自信を持っている。と、同時に、ジョイワークセンターだけではすべてのパーソナリティにご満足いただけないという自覚もあるからだ。

ジョイワークセンターでは、個人個人がなるべくマニュアルに依存しない方向性を推し進めている。むしろマニュアルの本質を掴んだ上で、マニュアルの改善ができる方向性を指向している。これはものすごく忍耐力がいるし時間もかかる。しかし、個人個人の発想を社会に活かすための創造性と自己解決力を最大の柱にしている。

一方、マニュアル通りの作業を厳しくたたき込んで、立派な社会人を形成する方法論もある。個人的には、これはこれで大きな価値があると思っている。いわゆる昔の「戸塚ヨットスクール」方式だ。おそらくこの方式でなければうまくいかない人もたくさんいるだろうと思う。だからその価値を最大限に認めた上で、ジョイワークセンターとしては別の路線を歩みたいと思っている。

個人個人の個性が違うことを認めるのと同じレベルで、支援するさまざまな団体のポリシーの違いも認めて讃え合える関係がいいと思っている。ジョイワークセンターはジョイワークセンターの色でやっていく。しかし、横の連携を密にすることでお互いの特色を補完しあう関係になれる。つまり障碍を持つ人が就職を考えたときに、広い選択肢を持つことができるようになるのだ。

ジョイワークセンターは今年もガンガン飛ばしていくつもりだ。そして、あえて誤解を恐れずに書きたい。「障碍者マーケット」自体の発展の一部となることを。もはやタブーではなく「受験生マーケット」や「育児マーケット」と同列に普通に語られるようになることを。そして、次のフェーズでは「障碍者」という区分で語られなくなる日を目指したい。

今は、障碍を持っている人のスペックを社会にアピールするフェーズだと思っている。これが浸透しないと、人材の本質的価値が社会に伝わらない。しかし、そのフェーズが十分な形で社会に広まったら、すでに「障碍」区分は関係なくなる。どんな人でも本質的な能力によって適正な社会貢献ができるようになるだろう。

これからそんな世の中を作るつもりだ。どうぞご期待いただきたい!

参考:ジョイワークセンター