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2009年6月21日日曜日

希望月収12万円以上

「精神の方(かた)」・・・というのは、いわゆる「精神的疾患を抱えた方」という意味でよく使う言葉です。・・・なんとなく隠語っぽい響きがありますけどね。ちなみに、もうちょっと中に入って話をする時には「当事者の方」になります。

それはともかく、私はこの領域の就労環境について興味を持っています。で、当事者の方々にお会いして就労状況などをヒアリングして回っているワケですが、なかなか光が当たらない世界だけに、新しい情報に触れるたびに未知の驚きを経験します。

まず、明らかになっているのは一般的に「精神の方」は、身体の障碍(しょうがい)と比較して企業から敬遠される可能性が非常に高いということ。(もちろん、そうでない企業もたくさんありますが。)

次に、救急救命士、美容師、指圧師などの資格制限のある職業に関して、そのほとんどが精神的疾患は制限対象になっているということ。職業の自由という観点から、完全に制限されているわけではありませんが、あえて望む場合は相当の厳しい審査が予想されます。

それから賃金が安くて、月収が手取り数万円ということも珍しくないらしいということ。もちろん障碍者の場合、障害年金を受け取れる可能性もあります。・・・あくまでも可能性ですが。

3級に認定されると、だいたい60万円を切るくらいの年額です。・・・何もしないで、さすがにこれだけでは生きてはいけない。月5万円たらず。ただし、これにしても会社勤めなどをして、厚生年金を支払っている必要があります。

「障碍者は障害年金を受けているから、何もしなくても食っていける。」・・・という思い込みが世の中で幅を利かせているような気もしますが、詳しく調べてみるとかなりの誤解ということが分かります。障碍者でも障害年金を受給できないケースも多いし、もらえたとしても、その年金では生きていくだけで精一杯という状況です。

ちなみに、2級に認定されると受給できる年額は上がるのですが、障害等級が2級となると就労どころか日常生活レベルで著しい制限があることが条件となります。そこでここでは3級もしくは受給を受けていない人について考えてみます。

で、独自に就労している当事者の方にヒアリングしてみました。

「いくら月収があれば納得できますか?」
→「最低限ですが手取りで12万円はあると助かりますね。」

えぇ?・・・すごく少ない・・・と正直なところ思いました。でも、さらにそこから深く考えると、この給与水準をとりまく事情がよく見えてきます。

その方の場合、精神疾患の事情で1日5時間の週3日=週22時間に労働時間を制限していました。仮に週15時間働ける人が、4週間(1ヶ月)ペースを崩さずに働いたとしましょう。すると月60時間ですね。

月60時間の就労で最低提示額の12万円を稼ぐために必要な時給を計算すると、120,000/60=2,000円となります。この時給で残業なしのフルタイムで働いたとすれば、1日8時間の週5日で4週間=月160時間で32万円になります。

・2008年度3月の派遣社員の平均時給が1,619円(エン・ジャパン調べ)。
・2009年度4月のアルバイト平均時給が955円(インテリジェンス調べ)

ちょっと同時期の調査結果を探しきれなかったのですが、こういう情勢を考慮した上で冷静にソロバンをはじくと、少ない就労時間で最低賃金12万円というのは、かなり浮世離れした願望ということになってしまうわけです。

さらに、職種別で最も高いシステム開発などの「IT関連」でも時給水準が2,059円(インテリジェンス調べ)。要するにハケンで最高値の業種についたとしても、最低賃金の12万円にやっと届くくらい。アルバイトの平均時給955円で考えたら月60時間で57,300円。残業なしのフルタイムなら152,800円。

つまり、就労時間数が大きく状況を左右するんですね。これを少しずつ増やさないことには、相当スキルが高くないと最低賃金の12万円に達することは困難だということですね。不幸なパターンとして考えられるのは、「企業側は努力して高額で雇用している」と思っているのに「雇用される側は月に12万円に達しなくて不満」という状況です。

雇用したい側の理解が今後も必要なことは書くまでもないワケですが、逆に雇用されたい側にも世の中をもっと知ろうとする姿勢が求められると思います。

企業側は障碍に関する理解を深めてよりよい環境を用意する工夫をするといいかもしれません。障碍者の側としては一歩だけ社会情勢と自分との関係を考えてみるといいかもしれません。

双方ともに背景や前提を理解して歩み寄っていく姿勢が必要なんだと思います。

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一部、記載に不正確な点がありましたので訂正しました。
ご指摘ありがとうございます。(2009/06/23)

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