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2009年11月21日土曜日

講師活動いよいよ開始

昨日、千葉の就労支援組織「ビルド」での即戦力ITコースを開講した。精神障碍を持った人に本気で必要な「テクニック」を教えていく講座だ。11月から「ビルド」の運営準備局は機能していたものの、まあ、準備なのでさまざまな施設見学に終始していた。

実際の受講者を前にして・・・という意味では昨日が初講義だ。最初から第一回目はオリエンテーションを行うつもりだったのだが、さすがに完全にパソコンなしで始めるとは思わなかったな。パソコンの納品が予定よりも遅れてしまったらしい。

集まってくれた受講者は12名。予想が8名だったからずいぶんと大勢の方が集まってくれた。本当にありがたいことだ。

まずは彼らが「なんのためにITコースに来たのか」を全員に聞いてみた。これが大事。

「即戦力ITコース」自体が目指すべきゴールはもちろんある。

しかし、受講者の「気持ち」を置き去りにして突っ走っても集団としてのゴールには近づかない。

それぞれの受講者の頭の中にはゴールのイメージがあるはずだ。それぞれの人生に、それぞれの価値観に基づいたゴールがある。そのゴールのイメージを集合させて、受講者全員でたどり着くゴールに導くことができれば面白いと思う。

彼らが渇望してやまない就労にしてもそうなのだ。会社にはさまざまな人間がいる。人生の価値観もそれぞれ違うし、それぞれが目指すべきゴールも違う。そういう個人個人が会社の「理念」という旗印のもとで集団としての能力を発揮している。

私の講座ではそれを大事にしたい。みんな違う。得意分野も違う。それをひとつひとつ丁寧に繋ぎ合わせることで、一人ではできなかったようなことができるようになる。「就労成功」というのはひとつの通過点にすぎない。

本当は「就労した後のこと」を考えながら走った方がいいと思うのだ。就労してから自分はどのようなポジションで働きたいのか。自分には何ができるのか。そして人間同士が力を合わせた時にどのようなパフォーマンスが実現するのか。それを実感してほしい。

「即戦力ITコース」自体が目指しているのは、将来、「IT系エンジニアに成長できる人」の種を撒くことだ。「IT系エンジニア」そのものを育成することではないところが、実は私にとって斬新な試みだ。だから初回のオリエンテーションで言い放った。

「私はITに関するすべての知識を教えるつもりはありません。」

たとえば新しい技術を習得しようとした時には、最初の入り口を自力で見つける能力が極めて重要になる。それはもっともシンプルで、かつ、自分にとって100%理解できる入り口を探すことだ。

その基本的な入り口を何度も反復練習し、そこからすこしずつ知識を拡張していくテクニックを重ねることで、自分にとって未知の領域をすこしずつ自分のスキルとして蓄積していくものなのだ。

私はITエンジニアとして、とりあえず十数年ご飯を食べてくることができた。それなりに厄介なことも経験したし、新しいこともさまざま経験してきた。でも、私はITエンジニアとして特別な適性があるわけでもないし、特別な才能があるわけでもない。

ただ、あえて適性と呼べるものがあるとすれば、「好奇心」とか「楽をしたい」という気持ちくらいのものだろうと思う。「好奇心」+「楽をしたい」というスタイルで、結果的にはその時に求められている多くの仕事を達成できた。

十数年、私がやってこられたのは、新しい入り口を探す方法論を自分なりに研究してきたこと。それからそこから得た知識を体系化して、自分なりのマニュアルを作る技術を考えてきたことだ。他人が書いたマニュアルを読むよりも自作することを常に考えてきた。

マニュアルを読むときでも、自分ならどのようにそれを再構成するかを考えながら読む。たいして特別な才能に恵まれたわけでもない私が、それなりに苦労して編み出した多くの「テクニック」に助けられている。それらを彼らに伝授することを考えている。

基本的にそれさえ体得できれば、何か新しいことを学ばなくてはならない時、そこに先生などいなくても自分の力で切り開くことができるはずだ。私はそこをこそ目指したいと考えている。

生きていて一番しあわせなことは、自分の能力が誰か(これを「社会」と読み替えてもよい)のために役に立っていると実感できることだろう。それのひとつの形が「就労」なのだと思う。

ははは。私にだってそういうしあわせを追いかける権利はある。私はここまで私が生きてこられた「すべ」を魂を込めて彼らに受け取ってもらいたいのだ。それで彼らがしあわせな日々に向かって船出をしていく。それが私にとっての純粋なしあわせだ。

もちろんね、この講座で得られた自分なりの貴重な気づきを元にして、別の事業も立ち上げるつもりだ。正直なところ、この講師料だけでは生活していけないからね。自分が干上がってしまっては彼らをゴールまで導けない。

社会変革を本気で起こそうと思ったら、やはり継続性を十分に考える必要があると思う。まだ経営者として未知数な私は「ドンキホーテ」に見えるかもしれない。でも、笑われたって構わない。私は本気で社会の方向性を変えようと思っている。相手がたとえドデカイ風車だったとしても戦ってみせる。

私にとってこの講座をすることは戦いだと思っている。だって悔しいじゃないか。たまたま精神障碍と診断されて、そこからの人生が大きく変わってしまうなんて。人生なんて紙一重なんだと思う。診断書一枚で変わってしまうんだから。

そういうのやっぱりおかしいと思うよ。


そういえば、お昼は近所の作業所に通っている当事者が作ってくれたランチをいただいた。むちゃくちゃ旨かった。これで300円って、一体どうなってるんだ。野菜は近所の農園で取れたものだそうで。ホントいい環境だな。

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