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2009年11月20日金曜日

トップセールスと成功

以前、起業家たちが集まる会に参加したときに、とある有名なセミナー会社のセールスマンが来ていた。若々しくて好感を持ったので話を聞いた。まだ会社に入って数か月足らずだそうで、「セミナー紹介CDを送ります」とのことで、断る理由もないので住所を教えてその日は別れた。

後日、CDが届いた。「拝聴したら感想をメールでお送りします」と返事したところ、「直接CDの感想を聞きたい」とセールスマン氏。正直、会おうかどうか迷った。CDの内容は抽象論ばかりでイマイチ具体的なネタに踏み込まない。

内容のほぼ半分は、自分が過去にどれくらい貧乏だったか。そして成功を意識してからどれくらいトップセールスマンになったか。語られるすべてのページが金ぴかの刺繍で飾られている感じ。申し訳ないけど・・・うさんくさいよ。これじゃ無理だ。

そして、ちょいちょい上から目線で「私の言ってる意味、分かりますか?」と聴いてくる。そのたびにイラッとして仕方なかった。もちろん実績も資産も間違いなくはるか上の方なので、上から目線は正しいのかも知れないけれど、好き好んで上から目線ビームは受けるものじゃない。

向上心がないとか、嫉妬で機会を逃すのはもったいない・・・という人もいるんだろうが、正直、CDを聴いている限りでは、私の嫌いなタイプの人間だ。こういう押しの強い社長は、激しく嫌われてしまうか、メンターとして崇められるかのどちらかだ。私は残念ながら前者だった。

そこを抽象論と自慢話だけでセミナー紹介を押し進めてしまうので、「そんなに中身の分からないモノだったら要らない」になってしまうわけだ。・・・という話を、若きセールスマン氏にした。「正直、そんなに内容不明な紹介で購買意欲が湧くとは思えない。」と。

そもそも会うことに決めた理由は、CDを送っていただいたことに対して「アウトプット」という形で礼儀を果たすべきだと考えたからだ。たとえそれがマイナス評価だったとしても、それを伝えることでよりよくなればいいと思ったからだ。

「商品自体はきっと悪くないんだと思うんだけれど、自分自身の力も試してみたいし、たぶん買うことになったとしても後々の話になると思いますよ。」と、購入意思がないことをやんわりと謝絶させてもらった。

「でも、もったいないと思いませんか?・・・成功までの道筋がはっきりと見えているんですよ。それを逃すのは人生にとって損失になりませんか?」・・・彼にとっての「成功」とは一体なんなんだろうか。というか「彼にとっての成功」が「私の成功」と等しいわけでは絶対にない。

時間が進むうちに、私に「買う」と言わせることは、私にとってではなく彼にとっての成功にしか見えない構造になっていた。正直大変だよなあと思う。社会経験も日が浅く、若き日にありがちな「社長万歳!」の状態では見えるものも見えないし、売れるものも売れない。

「CDの感想を聞きたい」とアプローチしておきながら、CDに対する苦言を呈すると「誰にでも満足できるものは作れませんから」と切り返してくる。おかしいだろう。CDについての感想を聞きに来たのではないか?・・・私は反論を受け付ける立場でもない。善意で言っているだけなのだ。

聴きたくないならこっちだってわざわざ言わないよ・・・という姿勢なのだから。「CDの内容でセミナーの具体的な内容も全く見えないし、お得感も全く感じない」とメッセージを送っているのだ。

「だったら内緒で(本当は社内で了承済み)、セミナーの一部を僕でよかったらやってみましょうか?」くらいのことを言ってもいいんじゃないだろうか。「会社には悪いですけど、とりあえず僕で役に立てることがあれば一部だけでも無料でお教えしますよ。」なんて言われたらどうだろう。

そんな理由で、今後、何度も足を運ばれて、無料の「こっそりセミナー」が続いてしまったとしたら。本当によいメソッドであるならば、たぶん何らかの効果は出てくるはずだ。そこまでの信頼感が醸成されてしまったら、たぶん私はそのセミナーにお金を払うと思う。それが人間としての礼儀だ。

セミナー紹介用CDも含めてケチいのだ。何も価値を感じさせるモノを出さずに、こちらのお金だけ出せというのは無理だ。今日は新人セールスマン氏の砥石になったわけだが、ちゃんと自前のセミナーで学ばせてからじゃないと、看板に傷がつくんではないかと余計な心配をしてしまう。

入り口でケチると、たとえ中身がいい商品だったとしてもダメになる事例かな・・・と思った。というか、特にこういう関連のシロモノは警戒させたらそれまでよ。本当にいい内容なら受けてみたいけれど、少なくとも今のセールスでは無理。今のところほしくない。

そのあたり「志縁塾」あたりは絶妙な商売の旨さがあるなと思う。無料に近いセミナーでもしっかりと、笑いとモチベーションを持ち帰らせてくれる。だから、また行きたくなる。お金を払っても行きたくなる。なぜなら、入り口で太っ腹だからだ。

競馬で一番儲けるのは、競馬でひと山あてたいヤツを相手に商売する情報屋。株とか投資情報で一番儲けるのは、投資でひと山当てたい素人投資家を相手にする情報屋。情報商材というのは作ったもの勝ちだ。成功マニュアルで一番儲けるのは・・・。

「成功」という一見甘美な蜜はどこに続いているか分からない。そもそも「成功」ってのは、それなりに自分で苦しんだり迷ったりしながら掴むものじゃないか?

マニュアルを自分で作ることを忘れて、完成系のマニュアルを簡単に買っちゃおう・・・というのは、なんだか安直な気がするよ。個人的には。

彼はこれからいいセールスマンになるんだろうか。そこは注目して見ていたいと思っている。彼の方からあきらめてしまわない限りは。

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