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2012年12月14日金曜日

遠慮しない

あいかわらず、発達障害でお悩みの方に特化した就労に役立ちそうなスキルを伝授する日々。その中でちょっと悩んだり考えたり迷ったりしていたことがあった。それは「利用者に配慮するレベル」について。

障害特性によっては、当事者が抗しがたいシチュエーションがある。いわゆる「地雷」というやつで、それは「状況」だったり「キーワード」だったりと種類は様々。そういう「地雷」に対してどういう姿勢で挑むかというのは支援におけるひとつのテーマかもしれない。

私は基本的に「無駄な地雷は踏まないに越したことはない」と考えている。「激しく嫌がられる」ようなことなんてしないほうがいいに決まっている。でも、特定の地雷は「どこに埋まっているか分からない」ということがある。たいていは「このあたりは危なそうだ」という精神的嗅覚に頼ることになる。

しかし、いずれにしてもいつか地雷は炸裂するもの。そのまま放置しておけば誰かがどこかで踏むわけだ。地雷を踏まないように注意している就労移行支援環境でうまくいったとしても、その先の就職先で誰かが地雷を踏んで、派手に爆発してしまえばそこで終わり。

とっかかりの部分についてはやむを得ないが、発達障害の就労移行支援で「腫れ物を触る」対応をし続けることは、最終的に当事者の利益に繋がらないことだと思う。医療にたとえれば、お腹の中に切り取るべき病巣があるのに、お腹の外側に塗り薬を塗ってごまかすようなものだ。

もちろん対応のひとつとして、「こういう状況は避けていただきたい」という「人材活用個別マニュアル」のようなものを作って企業に渡すのも有効だとは思う。当事者を多く採用すればするほど制限事項がひたすら増えていくだけになってしまう。そして企業はそれを嫌う。

だって面倒くさいじゃないか。だって、考えてもみよう。たとえばNGワードを事前通知するルールにしたとする。Aさんは「努力」「障害」「遅い」がNGワード、Bさんは「回復」「常識」「努力」「丁寧に」がNGワード、Cさんは「結果」「早く」「甘い」。……これが増えていったらNGワードだらけになる。

一人だけならなんとかなるかもしれないが、このルールが複数人で、かつ一人あたりのNGワードが複数に及べば把握しきれる範囲を超えてしまう。NGワードを設定することは、「職場の言葉狩り」を意味する。ましてや「NGワード」だけでなく「NG状況」も加われば混乱必至だろう。

基本的にこういう地雷を放っておいてはいけないのだ。もちろん障害特性も相まって、完全に撤去することは難しいかもしれない。でも、双方に歩み寄ることはできる。当事者は「地雷」を踏まれても爆発しない努力、企業側は当事者が「イヤな顔」を隠しきれなかったとしても大目に見る努力。

……現実的に考えるとすれば、このあたりが落としどころなのではないだろうか?

いずれにしても、それもこれも「地雷」が分かっていないとできないことで、「地雷」が分からないのであれば、もう、それは踏むしかないのだ。踏んでみて「カチッ」といったら、その場で安全に撤去するしかない。もしかすると爆発して縁切りコースかもしれないが、それでも踏むしかない。

なるべく事前に多くの地雷を発見して安全に解除する。解除できなかったとしても被害(当事者にとっても就職先にとっても)を最小限にするべきなのだ。影響範囲を最少にする努力をしたあとに、その内容について企業に説明できるといいんだろうと思う。