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2012年3月21日水曜日

ネスカフェ・ゴールドブレンドの詰め替えの謎


昔はそれほど好きでもなかったコーヒーを最近はよく飲んでいる。毎日飲んでいるので「愛飲家」という呼ばれ方をしても差し支えないレベルだ。自宅でも朝はコーヒーを飲むし、仕事中でも3杯以上は飲む。特別にこだわりはなかったはずだが、気がつくと「ネスカフェ・ゴールドブレンド」(以下、「NGB」)に落ち着いている。「違いが分かる男」というわけではないが、他のコーヒーよりも香りが気に入っている。

さて、世の中の不思議を眺めていると、思わぬ発想のヒントをもらえることがある。ひとつひとつはたいしたことがないのだが、突き詰めて考えてみると、いろいろな思考のトレーニングになるような気がする。そんな「ちょっとしたこと」として、NGBの「詰め替え」について考えてみた。実はNGBには不思議な現象がある。どうもスーパーで安売りされる時の価格設定がおかしいのだ。

(1) NGBには「ビン入り」と「詰め替え」がある。
(2) 「ビン入り」よりも「詰め替え」の方が内容量が少ない。
(3) たいていのスーパーでは「ビン入り」より「ビン入り」の方が安い。

つまり、

【量】 「ビン入り」>「詰め替え」
【価格】「ビン入り」<「詰め替え」

ということなのだ。正直なところ、あらゆる点で「詰め替え」は負けている。あえて弁護すれば「環境配慮」という点で優れているだけだ。いや、しかし、ガラスもプラスチックのふたもリサイクルされるのではないか?……確かに加工時のCo2排出量は少なくなりそうだが、どの程度効果があるのかよく分からない。

当然、他にも同じことを思った人がいたらしく、たまたまネスカフェのサイトを覗いてみたら、ネスカフェの掲示板に「詰め替えの方がビン入りよりも量が少ないのに、価格が高いのはおかしい」と書き込んでいる人がいた。

……しばらくして、何かが起こったのか知らないが、スーパーでの価格設定が「ビン入り」は「詰め替え」よりも高い価格設定になるようになってしまった。なんとも「ヤブヘビ」的な感じで残念な状況になってしまったのだが、なぜ、このような状況になったのだろう。なんとなく考えてみた。

(1) おそらく製造の原料コストは「ビン入り」>「詰め替え」だろう。
(2) しかし「詰め替え」の製造ラインの開発コストは回収しきっていないだろう。
(3) また「詰め替え」機構に特許料が発生しているならそこもコスト増だろう。
(4) ただし「詰め替え」は「ビン入り」より軽量なので輸送コストでは有利だろう。

長期的には洗剤の詰め替えパックと同じように、製造コストが安くなるであろう「詰め替え」製造に主軸を映してよさそうなものだが、なかなかそうはならないと思う。その理由をいくつか想像してみた。

(1) 洗剤と違って風味を封印する仕組みにガラス以上の管理コストがかかるのでは?
(2) 洗剤と違って出先で購入される可能性があり「詰め替え」では機会損失があるのでは?

以前、紙パックの飲み物に「薬品臭」が外部から移ってしまい問題になったことがあった。そういう意味で(1)を考えた。液体と固体の差はあるが、外からの臭いが紙を通過しないようにしないといけないし、また内部からの香りを逃がさないようにする必要がある。このあたりの技術開発には相応のコストがかかっているような気がする。出荷量が上がれば解決できるかもしれないが、現状では難しいのかもしれない。

それから、インスタントコーヒーが職場の近くのコンビニなどで購入される可能性を考えると(2)も想像できる。おそらく「詰め替え」を主力商品にするのは企業として勇気がいるだろう。洗剤は生活必需品なので、ある程度、定期的な需要が見込まれる。また定番化すれば使われる場所も限定されるので「詰め替え」の売れ行きも想定できる。しかし、コーヒーは嗜好品なので、他社製品からNGBに買い換えようと思った時に「ビン入り」がなければ、そのまま機会損失になってしまう。

機会損失を防ごうとすると、やはり「ビン入り」が主体で、製造コストの回収も考えなくてはならない「詰め替え」には、あまり力が入らないということなのかもしれない。ただ、そこで手をこまねいていたら、どう考えても消費者にとって嬉しくないことづくめの「詰め替え」は受け入れられないだろう。つまり「詰め替え」は、作れば作るほど赤字になる「お荷物商品」になってしまう可能性がある。

そうしないための経営戦略としては、「ビン入り」の価格は下げさせず、その代わり「詰め替え」を価格優遇する方法があると思う。つまり、「一度『ビン入り』を買ってしまえば『詰め替え』でランニングコストが安くなる」という刷り込みをすればいいのだ。こうすれば、消費者にとってNGBが定番化しやすくなるし、「詰め替え」の売り上げも安定してくると思うのだ。独禁法を恐れなくても仕入れ値の設定で何とかなると思うのだが……。

と、まあ、私は小売業でも製造業でもないのだけれど、ちょっとしたことでいろいろな経営シミュレーションを楽しむことができる。もちろん、優秀なブレーンが結集している大企業がやらないのだから、きっと現実には複雑な理由がいろいろとあるんだろう。それでも、いろいろと考えてみることで、自分が普段やっている仕事の今後の展開を考えるときに、こういう積み重ねが思考に深みを与えてくれるのではないだろうか。

妄想に近いのだが、こういうことを考えている時間はなんとなく楽しい。


◆Amazonで調べてみた……

すると、ある意味で驚きの事実が。

コンビニ価格ですら700円台のNGB(ビン入り)の新品価格って1469円だったらしい。普通に半額ってことか。たまに500円以下の時もあるので、正価から考えると3分の1も値引きされることがあるのか……。

それに対してNGB(詰め替え=エコ&システムパック)は新品価格が868円という表示。これが値引きされても700円台ということは、20分の1程度の値引き。ビン入り150グラム用の詰め替えは120グラムなので、実質的な値引き率はもっと悪いということになる。

◆というか方向性がそもそも違う

ただ、もっと調べてみると違う方向性が見えた。
どうやら、「ビン入り」の詰め替えというよりも「ネスカフェバリスタ」というコーヒーメーカーで使うカートリッジという位置づけなんだろう。確かにこの機械に詰め替えるとなれば、ビン入りは逆に不便だ。

逆に「詰め替え」を使えば手元が狂ってNGBをぶちまける心配もない。コーヒーメーカーの周辺にNGBをぶちまけたら相当掃除が面倒くさいと思う。掃除機で吸い取っても、その後に水拭きしたらそのままコーヒー色の汚れになってしまうのだから。

単に価格で勝負するためのラインナップというよりも、コーヒーメーカーへの詰め替え機能に特化した商品で、「ついでに『ビン入り』にも使えるよ」……という販売戦略なんじゃないかと思う。

「詰め替え」の価格設定がおかしいと思っていた人は、ネスカフェバリスタを購入してみると「機能性への対価」が分かるかもしれない。

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