WRAPというメソッドがある。アメリカで精神障碍の現場で編み出されたもので、「元気回復行動プラン」とも呼ばれている。ITエンジニア的な視点で表現すると「高度に洗練された自己回復のための危機管理技法」といえそうだ。
端的に表現してしまうと語弊があるかもしれないが、「自分自身の攻略本」を自分で作るスキルという感じだ。誰でも持っている「ダークな自分」をどうやってやっつけるか・・・ということを「あらかじめ考えておく」ということが大きなポイントだ。
私自身を例にとって考えてみる。スペースと時間の制約上、それぞれの例を2点に絞って紹介したい。
(1)良い状態の時の自分【自分にとっての標準状態を知る】
→すべてのことが「うまくいく」ような気分になる。
→関わるすべての人に感謝できるようになっている。
(2)毎日するといいこと【いい状態になれる行動を知る】
→少なくとも5時間以上は睡眠を取ること。
→ポジティブな話題で明るく誰かと盛り上がる。
(3)気分が悪くなる引き金【状態が悪くなるきっかけを知る】
→「常識」を旗印にして頭ごなしに否定されること。
→選択の自由がなく強要されていると感じたとき。
(4)引き金による注意サイン【危機発生の兆しを知る】
→注意が特定のことに偏ってしまい視野が狭くなる。
→脳内の血流が高まり「めまい」に近い感覚がある。
(5)調子が悪くなっているサイン【危機発生後の状況検知】
→引き金となったシーンを何度も思い出してしまう。
→他の人たちも自分から離れていくような被害妄想を抱く。
(6)第三者に「普段の自分」を伝える【通常ステータスの通知】
→あまり感情的にならないか、ポジティブな感情を示す。
→できうる限りすべてのことをポジティブにとらえようとする。
(6)第三者に「異変後の自分」を伝える【異常ステータスの通知】
→会話中は声のトーンが大きく高くなり表情が引きつってくる
→会話しない時は表情が無表情に近くなり極端に無口になる
(7)第三者に「してほしいこと」を伝える【異常対処方法の通知】
→「ちょっと休憩にしませんか?」とインターバルをいれてもらう。
→「意見を強要しているわけでない」という意図を伝えてもらう。
(8)必要な投薬や主治医に関する情報【危機管理情報の通知】
★私は投薬も通院もしていないので例示できない
望む処置方法や病院などを通知可能。
逆に望まない処置方法や病院なども通知可能。
WRAPについてはまだまだ研究中のため、解釈が正しくない可能性もある。それでも「第三者を意識した危機管理マニュアル」になっている点は非常に興味深い。特に自分が制御不能になった時のシミュレーションは有効だろう。
今のところ、一般的な職場でWRAPを取り入れている例をあまり知らないが、障碍の有無に関わらず積極的に就労環境に取り入れていけば、何かしらの変化が見られるようになると考えている。
なお、今回のエントリーを書くにあたっては、千葉「らっぴん」で入手させていただいた、「元気回復行動プラン WRAP」(道具箱・刊)という赤い本を参考にした。
※一般書店で販売されていないので、ここから注文するとよいだろう。
この赤い本だけでも十分にWRAPの魅力を知ることができるが、本当に実践しようと思ったらWRAPのイベントに参加するのがいいかもしれない。私もいずれ参加するつもりだ。
このメソッドが企業活動にどのようなメリットを与えるのか。興味は尽きない。
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