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2010年8月7日土曜日

いいこいいこ・・・できない

精神の障碍のある人の就職サポートの現場にいるが、その中ではなんともスッキリしないこともある。

精神的に上がり調子にならない人を応援して調子を上げていく。このこと自体は問題はない。ただ、それが行き過ぎた時に、本人の人生がどうなるのだろうかと心配になることがある。

たとえば、履歴書や職歴報告書を全部書いてあげたり、企業とのやりとりをすべて福祉スタッフが本人の肩代わりをすること。これらは就職支援の場では日常茶飯事だ。「いいこいいこ」しながら、なんとかなだめすかして就職させている状況も多く見てきた。

でも、私の気持ちは少し違う。どこまでも「肩代わり」ではなく「支援」であるべきなんじゃないかと思うのだ。過保護な親が大学の卒業式にまでついていく・・・と、そんなイメージが頭をよぎってしまう。

たまに私がIT系の作品作りをサポートすることもあったが、まるで私が就職試験を受けるような気分になったものだ。

そしてそこから葛藤が始まるのだ。「彼が無事に就職できたとして、その後、ちゃんとひとりでやっていけるだろうか?」と。いくらフォローするといっても24時間体制で食いつくわけにはいかない。仮に納期が遅れそうだからといって、私が彼の仕事に張り付くこともできないのだ。

私の「即戦力ITコース」では、比較的厳しい姿勢をとっている。いや、実際のところ、「厳しい姿勢をとろうとしている」が正しいかもしれない。もちろん、病気は病気として認めたい。

しかし、私は「病気」を認めるギリギリ端っこの部分に位置していたいと考えている。「『病気』をいいわけにしない」ギリギリのところで、いろんなことを楽しみながら身につけてほしいのだ。

自分自身についてもそうなのだが、高いモチベーションを維持していくためには、自分でできたことに対して適正な評価をしていく必要がある。

だから、受講生が自力で何かを成し遂げた時には、そのすばらしさを言葉で本人に伝えるようにしている。もちろん私だってうれしいのだから。

しかし、そこからが難しいところだ。

人によってはそのレベルで満足してしまい、先に進もうとしなくなってしまうことがある。もちろん、「昨日の自分にできなかったことができるようになった」ということは、間違いなくすばらしいことだ。

だが、肝心なのは「その先」が必ずあるということだ。挑戦しようとする限り、頂上まで続く道は続いている。それを自覚するだけで姿勢が変わってくると思う。

だから、「いいこいいこ」だけでは、現実的な就職に結びつくところまで行きつくまでに、とても時間がかかってしまう。向かうべき最終的な到達点までの距離を見誤ってしまうからだ。

私が担当しているコースには「甘口」と「辛口」がある。「辛口」は受講生自身の力で這い上がってもらうため、私はそのためのヒントを伝えたり、モチベーションを高くするためのコーチングに専念するゼミ形式だ。

一方、「甘口」は自力で這い上がっていくために必要な練習をする場で、私が全員の前で講義をする形式だ。より自主性が必要とされるのは「辛口」であることは書くまでもない。

しかし、実際には「甘口」の方が受講生から高評価をもらうことが多い。それも、簡単にすればするほど高評価になる傾向がある。正直なところ心中複雑だ。

甘くすれば甘くしただけ、現実的な就職への道が遠のくばかりなのだから。だから「辛口」の受講生にはそれなりのストレスがかかるようにしている。それは「やや高いハードル」だったりもすれば「期待感のプレッシャー」だったりもする。

当たり前のことだが、「お金をもらう」=「プロ」ということだろう。すると「就職してお金をもらう」=「プロになる」ということだ。当然ながらプロにはプロなりの姿勢や考え方が要求される。

たとえば画像修正(レタッチ)であれば、誰が見ても画像修正を施したと分からないレベルにまで仕上げることだ。特に自己満足ではなく客観的に見られるようになることが重要だ。

よく受講生から「これで完璧です」と作品を見せられることがあるが、画像であれば目立つところにノイズがのっていたり、Webページであれば誤字脱字があったりすることがある。このあたりの「詰め」の部分の厳しさを持つことは大事だ。

そういう作品については遠慮なく突き返している。せっかくできるようになってきたのだから、中途半端ではもったいないのだ。できない人には要求しない。できる可能性があるからこそ厳しくする。

よくできたところは最大限に賛辞を送る。しかし、中途半端だと思うところについては遠慮なく辛口コメントを飛ばしている。なぜなら、いずれ「ひとりだち」をしなくてはならないからだ。

自分の人生には自分自身で責任を持つ必要がある。だから、私は本人のためにならないと判断したときは絶対に「いいこいいこ」なんてしない。

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