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2009年9月4日金曜日

大きい会社の宿命?

いろんな立場にいる人が読める場で、こういうコトは書きづらいコトだが、私にとって「ハケン」を始めることは屈辱的なコトだった。正直なところ「ハケン」をやらずに済む方法があるのなら、それを選びたかった。でも、一方で正社員としての会社勤めをするつもりはなかった。もう、これ以上「やらされ仕事」をやりたくなかったから。

もちろん自分の中で上手に消化(「昇華」でもいい)することができれば、どんなコトでも「やらされ仕事」じゃなくなる。自分なりの意義を持って与えられた職務を果たすことも重要だ。しかしながら、中小企業とはいえどもトップの近くで仕事をした立場として、自分のやりたいコトと会社の方針が違う時に、何度もジレンマを抱えることになった。

もちろん、リスクを自らとった人の意見が強いのは当たり前だ。リスクを持たない人は文句や批判だけを口にして、いざとなれば他へ転職すればいいだけだ。しかし、リスクをとっている人はさまざまな責任を取らなくてはいけない。進言を受け入れるのも拒否するのも責任が伴うのが当然だ。

だから、自分で強くやりたいコトがあるのなら、他人のふんどしで相撲を取ってはいけないのだろうと思ったのだ。やりたいことについて社長とケンカする暇があるなら、自分がリスクを取ってやりたいコトをやる覚悟ができているかどうかを考えたほうがいい。

そんなコトを考えながら仕方なく選んだ選択肢が「ハケン」だった。もちろん、今にしてみれば大いに感謝している。なんだかんだと言ってみても2年近く私の生活を支えてくれた環境だったことに違いはない。それにいわゆる大企業と呼ばれる環境を体験できたのも幸いだった。大企業のパワーやリソースの豊富さも体験できたし、ネックになる部分もたくさん自分の目と耳で理解できた。

ただ、プロパーではない立場ゆえに仕方がないのかも知れないが、大企業という場所は私にとって居心地のいい場所ではなかった。語弊があるかも知れないが「たらたら」と「つつがなく」生きるにはこんなに快適な環境はないと思うし、プロパーならそんな環境でも大きなミスがなければ、これからも生き抜いていけるんだろうと思う。もちろんリストラがないとも言えないけれど。

「たらたら」と「つつがなく」ハケンを続けていくリスクについては、以前にも十分に書いたので詳細は割愛したい。今回は大企業が自分の肌に合わない理由を考えてみたいと思う。なぜなら、それを考えることで自分自身が目指したい方向が見えてくると思うからだ。

まず、「自分でなんとかしよう」という意志を持った人が比較的少ないような気がすること。もちろん大企業には豊富な人材リソースがあるのだから、そういう人脈や部署と密接に協力していくことは重要だと思う。だけど、ちょっとそういう次元の話とそれた感じの違和感。

「うちはうちのやるべきコトをやった。ボールは投げたんだから、後はあっちの仕事。うちには何も問題はない。」・・・確かに問題はないのかも知れないけど、この不思議な不安感はなんだろう。もちろん「上流工程」と呼ばれる職場においては、全体のスケジューリングやコーディネートを行うことが重要なんだけど、それ単体の技能で食っていける仕事なのかどうか分からない。

それから、これは仕方のないことなのかも知れないけど、何をするにもとにかく慎重。企業の看板を背負っていることも理由なのだろうけど、とにかく失敗を恐れる人が多い。見ればすぐに分かりそうなことでも、それを自分の判断にしないで専門の部署に確認してから進めていく。時にその「鈍さ」をウザったく感じることもあるが、それがその組織で生き抜いていく処世術なら仕方がない。

そういう仕事のやり方は、その組織で生きていくためには必要なルールなんだろうけど、その外側の人間にとっては窮屈かつ退屈なこと極まりない。とにかく後で自分の責任が追及されないように徹底的に保身しながら針をつつく感じ。

そういう環境下では常にガード状態でいることが基本になる。ちょっと見れば分かるようなことでも他の人に確認するようになる。だから私もそうする。郷に入れば郷に従えだ。我を張って自分の意見を通していては歩けない場所もある。ただ、本当は判断をお願いした「他の人」がどのような思考経路を辿って判断したのか・・・の方が重要なんだと思う。

ただ、そこは大企業。判断を任せた部署の担当者が間違った回答をした場合、その部署の責任にしてしまえば自分たちの部署には傷が付かない。たしかにその環境下での判断としては正しいんだろうけど、その感覚で起業したり中小企業に転職したとしたら苦労するだろうなと思う。まぁ、しないだろうけど。

逆に私は中小企業の経験が多いから大企業にハケンで来てみて驚いた。「ほとんどのことは自分でやらなくても大丈夫なんだ」と。技術職のつもりで来たんだけど、そんなに技術はいらない感じ。そりゃ最低限のことは知らなくちゃいけないけど、本当に最低限の知識でなんとかなっちゃう。

ひょっとしたら中小企業でガツガツやっているエンジニアの方がスキルは高いかもしれない。だって、他人に頼れないから自力でやるしかないんだもん・・・中小企業だと。たぶん、何百人という社員の中で数パーセントくらいの「ハイパーな頭脳」がいて、その残りが「忠実にルールを守る兵隊」という構造になっているのかも知れない。

大企業を体験したことのない中小企業の社長が、大企業の文化にアテられちゃって「うちも大企業を見習おう!」ってケースがけっこうあるような気がする。その思い込みが中小企業らしい機動性を奪った挙句、人材リソースに組織力がないものだから業務が回らなくなる・・・というパターンも多いんじゃないだろうか。

私がハケンを通して得られた価値ある経験は「入社が難しい大企業でも、ものすごい人材が溢れているワケじゃない。」という点。つまり大企業にあまり過大な夢とかイメージを持っていると、判断を誤ることがあるんじゃないか・・・というコト。そういう意味では正直なところガッカリした面もなくはないが、大企業に対して抱いていた幻想がなくなっただけでも貴重な発見だと思う。

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