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2012年4月18日水曜日

二番煎じが効率的だから

諸説あるようだが、「二番煎じがもっとも効率性を追求できるビジネス手法である」という考え方がある。一番手は「多くのリスク」をかかこんでしまう。さりとて最後列に並んでしまうと利益はほとんど残っていない。だから「革新的な一番手が通った直後を通れば、少ないリスク(=コスト)で利益を享受できる」という考え方だ。

「ビジネス」として考えた場合、私もほとんど同意する。もちろん、「働くことに関する幸せ」ではなく「利益の効率性」を最優先するわけだが、それはそれでありだと思う。しかし、「就労移行支援事業」として考えたとき、私はビジネス的な考え方を貫き通すことに大きな疑問を感じる。自分たちの利益のために利用者の人生を「犠牲」にすることになってはいけないと思うからだ。

賛否両論あるだろうが、私は障害の有無にかかわらず「自ら考えて働くことの幸せ」を体験できる場を必死になって作ってきた。その結果として、「高いモチベーション」が先行して「体調」を牽引するというケースをたくさん見ることができた。「自分が必要とされていること」そして「自分が持っているイメージが実現する楽しさ」は、人生の起爆剤になる。

この環境を作り上げることができたのは、「既存の価値観」をできる限り意識せず、「前向きに生きることに何が必要なのか?」という一点のみに集中させていただいた環境のおかげだ。そういう意味では私一人の力で達成しえたものではなく、多くの方々に無言のご支援をいただいたからこそ実現できた。

私が作り上げた仕事環境は、「自分たちで考える」、「自分たちで解決する」という一貫した理念のもとで急成長している。私にとってそのルーツとなる考え方は「NPO法人NECST」が運営する、メンタルの方が集うクラブハウス「ForUs」のマディソンモデル活用事業に学んだもので、当然ながら私はこの考え方に大きく同意している。

ここで逆説的に考えてみよう。私が構築してきた「自律的職業訓練環境」を壊す方法は非常にシンプルだ。それは「職員が考えたルール」を利用者に一方的に押しつけてしまえば、すぐに崩壊する。彼らを「幼児」のごとく扱い、尊厳を傷つけるようなルールを導入すれば、1年近くかけて構築した環境は1ヶ月ともたないだろう。

だからこそ、私は感謝している。今まで二番煎じ的な発想で他の事業所のマネをせず、リスクがあっても独走させてくれたことに対する感謝だ。私のもとで仕事をしてくれている利用者の方がこんなことをいってくれた。「もし、ここが他の作業所と同じように管理型のルールを押しつけるような場所だったら、私はここにもいられなかったと思います。」と。

その時に私は気づいた。「ビジネスの基本は『質のよい模倣』にあるが、彼らに必要な環境は模倣性を高くして得られるというものではない。」ということだ。就労移行支援事業者が「右にならえ」をしてしまえば、社会の中に居心地の悪さを感じている彼らから選択肢を奪い取ってしまうだけになってしまう。

もちろん、私が目指している仕事環境は万人に適しているものではない。だからこそ、私とは違う価値観の人間が他にも就労移行支援事業を立ち上げるべきなのだと思う。そのようにして、バラエティ豊かな環境が選択肢の幅を広げていくことになれば、もうすこし世の中が明るくなるのではないかと思っている。二番煎じではない独自性の高い就労移行支援事業が増えてくるといいと願っている。

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