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2012年4月4日水曜日

「やらせる」ではだめなんだ

世の中には実にさまざまな考え方がある。「ゴールデンルール」、「GTD」、「7つの習慣」……など、仕事の効率を高める方法には私自身も非常に深い興味を持っている。しかし、こういう仕事術には注意をしなくてはならないと思っている。就労移行支援事業に関わる立場として、特に私は注意を払っている。

それは「自分に役に立ったからといって『やらせてみる』ではダメだ」ということだ。組織を動かすプロに多いような気がするが、「やらせればなんとかなる」と勘違いしてはいけない。なぜなら、そこにいたるプロセスの方がずっと大切だからだ。逆説的にいえば、「やらせる」という形ではうまくいかない確率のほうが高いと思う。

私は個人的に「どの仕事にどれくらい時間を使ったか」という記録をとっている。ひとつのタスクごとに記録しているので、一日が終わってみて「何も終わらなかったけれど、一体、何に時間をとられたのか分からない。」ということは一切なくなった。さらに一週間毎にレビューを実施すると、「何をやめるべき」で「何をすべきか」という点が明確になってくる。

しかし、実は、この行動記録を数年前に「やらされた」ことがある。とある社長の業務命令に仕方なく従ったわけだが、実はまともに業務記録などやっていなかった。ありそうな時間記録をして、ある意味では「でっちあげ」で報告していた。なぜなら記録をとること自体が「時間の無駄」だと思っていたからだ。だから当然、何の役にも立たなかった。

つまり、「自分で自分を改善しよう」という明確な目的がなければ、どれだけメソッドが優秀であっても意味がないのだ。「目的に達するためのメソッド」という考え方が重要で、「メソッドを実行することが目的」になることは全くナンセンスだ。本質的には「メソッドに近づきたくなるモチベーション」を身につけることの方が大事だ。

たとえば就労移行支援の現場にいると、「MOS検定試験に通る」という目的を持つ利用者をよく見かける。たしかにMOS検定に合格すれば、「マイクロソフトのOfficeがどの程度使えるのか?」という指標にはなる。しかし、これにしても同じことだと私は思っている。「MOSに通ること」が目的ではなく「どういう仕事にどういう機能が使えるか?」という観点こそが必要なのではないだろうか。

ビジネス関連のメソッドは、その根底に「自主性」があって初めて成立するものだ。必要に迫られなくては何も機能しないのだ。まったく忙しくない人に機能的なシステム手帳をプレゼントするようなものだ。忙しくもない人にシステム手帳を渡すのは「ゴミを渡される」ようなもので、それは「迷惑」でしかない。そこに気づかず「一方的にメソッドを押しつける」というやり方は百害あって一利なしだ。

私自身、ビジネスを加速させるメソッドを試してみることは楽しいことだ。それで、今まで見えなかった発見や、仕事の効率が高まることに至上の幸せを感じる。しかし、それでも「押しつけない」ようにしなければと自戒している。こういうメソッドが好きな人には陥りがちな罠があるからだ。「進んだメソッドを積極的に取り入れている自分は賢い」という勘違いだ。上から目線では誰も育たないことを知らなければいけないと思う。

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