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2010年7月15日木曜日

人生の残り時間

私は精神疾患の当事者対象にITコースの講師をしている。それは、IT業界の経験者が少ない福祉業界にあって、IT関連への職業選択の可能性を広げたいからだ。そして私はITエンジニアになりたい当事者に「知識」ではなく「経験」を提供している。自分自身で解決したという「経験」ほど強いものはない。

このコースを始める前にはいろいろと検討要素もあったが、実際にやってみると、それなりに効果が上がっているような実感がある。それはひとえに受講してくださっている方の気持ちに支えられている部分が強いと感じている。

それでも、考えさせられることも多々ある。たとえば「就職支援」の前段階である「生活支援」が必要な人が、「講義に出席すること自体に意味がある」と考えたり、周囲に教えられたりしている場合だ。まったくモチベーションがないのに、とりあえず机に座っているケースがある。もっと正確に書いてしまうと机に突っ伏してしまう方もいる。

「休憩なら隣のお部屋でどうぞ。」

このあたりのさじ加減が難しいところなのだが、私はそういう方にはやんわりと退室をお願いしている。本当に難しい。本来であれば、モチベーションを高めることが私が行うべきミッションだ。自分の中では「職務放棄ではないか」と重く受け止めている面もある。しかし、実際問題としては退室をお願いしなければならない境界線がある。

私は「前に進みたいと願っている人」を絶対に応援したい。理解に時間がかかる人もいるし、実際のところ私もどちらかというと理解に時間のかかるタイプの人間だ。気合いと結果というものは、しばしば理想と乖離することがある。だからそこを責めても仕方がない。どれだけ時間がかかってもモチベーションさえあれば、なんとかなる。

しかし、最初からモチベーションがマイナスを向いている方は難しい。おそらく参加しても何もする意欲がないのだから眠いだけだろう。眠いことを我慢するということは、現実的に大切な場面も存在するが、それでも基本的に無駄な苦痛だと思う。貴重な人生の時間を無駄な苦痛に割くくらいなら退室いただいた方がいいだろうと思う。

福祉的な観点から、「座っているだけでいいから参加させてあげてほしい。そこから何かに気づくかもしれない。」と注意なり勧告されることも少なくない。私もそういうご意見については理解している。しかし、私はあえて厳しく対応したいと考えている。なぜなら「前に進みたい」と考えて参加してくださっている他の受講生の方に失礼にあたるからだ。

ただ、「腐ったみかん」と考えているのかというと、それも違う。そうではない。そういう場に入るタイミングがまだきていないだけなのだと思う。そしてそういう場に入る前の姿勢作りはとても大事だ。だから、そのうち個別でモチベーションの発掘をしたいと考えている。それが終わってから講義に参加していただければよいのだろう。

ITコースを受講してくださっている方に力がついてきていることを最近特に感じる。「何もできなかった」と語っている方が、今では動きのあるWebページを作れるようになってきている。そして自分たちで新しいことを始めようとしている。私はそういう流れに希望の光を見ている。モチベーションこそが自分の人生を自走するためのエネルギーだ。

今はモチベーションのエネルギーが不足している人もいる。しかし、いつかは自分が持つエネルギーに気づける日が来るといいと願う。人生の時間には必ず限りがある。だからすこしでもエネルギーを燃やして有意義な時間を送ってほしいと思うのだ。ブルーな日々よりもハッピーな日々を送った方がいいように思う。

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