デジタル文化の発達により、時間内に処理しなければならない行動の密度が凝縮されている昨今、タスク管理に関するコンテンツは増え続けています。タスクの細分化、タスクの優先順位、タスクの納期管理……さまざまなツールがあり、さまざまな運用法がありますが、それだけで解決しない課題もあります。
タスク管理の方法をどれだけ知っても、知識だけでタスク管理が機能するというわけではありません。タスク管理の最も基本的な側面は「タスクリスト」の作成です。しかし、これを作成して並べるだけでなんとかなるのかといえば、そうはなりません。「実行したい」というエネルギーが必要不可欠なのです。
多くの「タスク管理」はモチベーションが十分にあることが前提になっています。やりたくない人に無理矢理やらせても無駄が多いので、それは当然のことなのですが、同じ人でも体調の波によってモチベーションの不調はやってきます。そういう時に乗り越えるノウハウを知っておくことは重要だと思います。
◆その願望はリアルなのか
比較的「雇われ仕事」で発生するタスクのモチベーションはシンプルです。なぜならば、やらなければ必ず何らかのペナルティがあり、後で困ってしまうことになるのでやらざるを得ないのです。問題は、自分で何かのプロジェクトを推進する時などで、どの選択肢も同じ程度に実現性に乏しい気がする時です。
どのタスクをやっても大した成果が出なさそうに感じる時、脳は何かの決断や選択を拒絶するようです。「やっても無駄かも」と思えるタスクに気持ちよく着手することは案外難しいのです。もちろん悩まずに、その「やっても無駄かも」をひとつひとつ根気強く潰すのが合理的なのですが、そうもいきません。
よく、起業に関する本を読んでいると、たいていはこのフレーズがでてきます。「成功したときのイメージを心に描こう」と。結局「夢」が大切なんですか……と軽視しがちですが、エネルギーが低下してきた時、最後にモノをいうのは自分の中にある「理想」をどれくらい本気でイメージできるかに尽きます。
◆非現実イメージが邪魔をする
非現実化イメージというのは恐ろしいモノです。何かを始める時には周囲から「できるわけないさ」といわれる言葉を背にして奮起するのですが、長期戦になってきて成果が上がっていないと、無意識が「簡単にできるわけないよなあ」に変わってしまいます。信じていない目標に向かって惰性で進むだけです。
自分自身が「現実化を信じていない夢」に向かって歩き続けるのは、ただツライだけです。開業当時の自分自身の気持ちに背を向けて歩き続けられるわけがないのです。事業を動かしていく人に必要なことは、自分の計画をできるだけ多くの人に宣言することだと思います。厳しい相手ほど効果があるでしょう。
中小企業の経営者が組織するコミュニティが存在する理由が、実は私にはよく分かっていなかったのですが、最近になって価値が分かってきたような気がします。それは自分自身の心のあり方を「自分自身に監視させる」モチベーションを得るためではないでしょうか。ごまかして生きていてはいけないのです。